保険ERM経営の理論と実践(金融財政事情研究会)
SOMPO HoldingsにおけるERM態勢
SOMPOグループではERMを「資本を有効活用し、適切なリスクコントロールのもと収益を向上させて、企業価値の最大化を目指す経営管理手法」と位置づけ、「戦略的リスク経営」と呼称して展開している。
資本・リスク・リターンのバランスを適切にコントロールし、財務健全性の確保、資本効率の向上、リスク対比の収益性向上を図っている。
取り組み状況
A. 自己資本管理
統一的な尺度で各種リスクを測定。リスク総量(99.95%VaR・保有期間1年)と実質自己資本(経済価値ベースの資産と負債の額の差額)を比較・管理
B. ストレステスト
リスク総量および実質自己資本への影響度を分析・評価するため、シナリオを設定し、ストレステストを実施。
C. リスクアセスメント
リスクの特定・評価を行い、対応策を策定・実施
D. リミット管理
特定の与信先への与信の集中、特定再保険者への出再の集中、自然災害のリスクの集積を管理するためのリミットを設定。
「戦略的リスク経営」のPDCAサイクルの構築
⇒リスク選好・各種リミットの設定・見直しおよびリスク選好の資本配賦への反映、ORSAレポート、方針・規程の周知、リスク管理・ガバナンス態勢の強化
ERMのガバナンス
「リスク選好原則」にのっとり、グループ戦略上必要とする財務の健全性にかかわる「リスク許容度」を定め、グループが抱えるリスクを統一的な尺度で計測。リスク総量と実質自己資本(経済価値ベースの資産と負債の差額)を比較。
信頼水準(99.95%・保有期間1年)としてグループが被る可能性がある損失額をVaRにより定量化している。
※リスク間の分散効果なども考慮し、内部モデル等を用いて算出
資本効率と財務健全性の双方を満たす「ターゲット資本水準(120%~170%)を設定
ストレステスト
ストレスシナリオを特定し、脆弱性の把握および事前・事後の行動計画の検討など経営の意思決定に活用。
リバース・ストレステストおよび感応度分析を行い、リスクおよび実質自己資本への影響度を分析・把握している。
ヒストリカルシナリオ(関東大震災など)および仮想シナリオ(再現期間250年の台風など)複数のストレスシナリオを設定し、顕在化した際の内部ソルベンシー比率への影響を算出
リバース・ストレステストは内部ソルベンシー比率100%、法定ソルベンシーマージン比率200%となるような事象を設定し、シナリオを機能的に特定することでリスク選好の枠組みの整備に活用
感応度分析においては主要なリスク要因(株価、金利、為替)の変動が内部ソルベンシー比率に与える影響を算出し、脆弱性の把握に活用している。
資本の有効活用
グループ全体の事業を事業単位(国内損保・国内生保・海外保険事業・金融サービス事業)に区分し、「リスク選好原則」をふまえて成長性や収益性の高い事業単位により多くの資本配賦を行っている。
収益指標による定量的な妥当性確認を行い、グループ全体として効率的な事業ポートフォリオを構築することを企図している。
各事業単位では配布された資本の範囲内で収益性を考慮したリスクテイクを行う、配布された資本とリスク量を比較・モニタリングする自己資本管理を行う。また、事業計画における利益目標やリスクテイクの進捗状況を確認するとともに収益指標を用いてパフォーマンス評価を行い、資本配賦や事業計画の見直しを実施。
「戦略的リスク経営」においてはグループ戦略・経営計画の策定に際してグループリスク選好を定め、それに基づき事業計画、資本配賦方針、リスクテイク方針が整合的に策定される枠組みとしており、リスク選好は経営戦略・経営計画の起点となっている。
保険引受・資産運用でのERMの活用
・海外M&AにおけるROE目標と整合的なハードルレートを判断基準とする
・自然災害リスクの引受方針・出再方針
・政策株式の売却計画 など
課題としてはリスク選好と整合的な役職員の業績評価・報酬制度の導入やリスクベース・プライシングを含むリスクベースでの商品戦略・料率水準評価などへの活用
自然災害リスクの把握
・国内自然災害リスクは地震・台風についてはリスク社が開発したモデルを用いて、それ以外は過去の保険金支払いデータに基づき統計的手法によりリスク量を評価。
・海外自然災害リスクはモデルを活用して集積リスクを定量的に評価・モニタリング
・自然災害リスクに関する再保険の手配は保有水準を設定し、出再スキームを構築。
(コメント)
まだAmazonのアフィリエイトを貼付できないので情報だけ。。。
タイトル:保険ERM経営の理論と実践
出版社 :金融財政事情研究会